INTRODUCTION
イントロダクション
この世界の住人には、
人間にはない臓器がある。
住人たちは「食べる」ことを通して知覚し、
「排泄」を通して新たな関わりをつくっていく。
住人たちをとりまく世界には、
さまざまなモノがあり、
それらはたまにチカチカと光り出す。
その光は何を意味するのか。
ひたすら食べるモノを探しつづける
住人たちには、その光は見えない。
チカチカ光らないモノを食べても、
ただのウンコが出るだけ。
偶然か必然か、チカチカ光るモノを食べ、
「もうひとつの臓器」で消化されると......
おならが出て空を飛べたり、
なにかに使えそうな道具が出てきたり、
きれいな色の果物が出てきたり、
誰かにとってのチカチカ光るモノが
出てきたりするかもしれない。
KEY ITEMS
キーアイテム
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もうひとつの臓器
食べたモノを消化しながらまるっと知覚し、別のモノへと変態させる、この世界の住人特有の器官。ただし、「もうひとつの臓器」に入り込み、その形状にピタッとはまるモノしかその機能を発揮しない。なにがピタッとはまり腑に落ちるかは、住人それぞれ異なる。人間がなにに対して心を動かし、それがどんな感情をもたらすか、はたまたどうやって腑に落ちるか、自ら完全にコントロールできないということと、遠からず似ている。
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チカチカ光るモノたち
この光は、しばしば「兆し」として住人たちの前に現れるが、見過ごされる(見えていない)ことのほうが多い。また、同じモノであっても、時間や場所、状況によって光る/光らないときがある。余談だが、山・森での採集においては、そのときターゲットとなる山菜やキノコを見分ける目が重要だが、最も重要なのはターゲット以外のものにもピンとくる感覚を開いておくこと。そんな平たい目と集中力だったりする。
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ウンコに喜ぶ微生物
「もうひとつの臓器」で消化・変態されずに排泄されたモノ=ウンコも、視点やスケール、枠組みを変えれば誰かの“チカチカ光るモノ”になりうる。人間においても、その本質をとらえるべく「土を要とし、自らの肉体と大地とをひとつながりのものととらえる」活動を行う糞土師(ふんどし)なる探究者がおり、今回、勝手にいろいろなヒントをいただいた。
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いろいろなウンコあるいは道具
20世紀を代表する哲学者のひとりが、道具を「産業主義的道具」と「各人の自由の範囲を拡大する道具」の2つに仕分けて考えていた。ここにもうひとつ加えるとしたら、「潜在的道具」がある。今は使えない/使わないが、後々使える/使う可能性をもっているのでは?という、モノに対する勘どころ。ウンコがその内に入ることもあるのではないか。
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躍動する山のような生き物と湧水
山形県の日本海沿岸には、ところどころ水の湧くスポットがある。水の通り道に腕をつっこむと、その際限のない奥深さに、ちょっとした恐怖を感じてしまうほどだ。異界へとつづいているかもしれない……そんな想像を実感として得ることができる。大きな山のような生き物に食われ、排泄された住人は、まさに異界から戻ってきた(?)といえるだろう。
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バラバラの身体
地中から噴き上げられた身体がほかの住人とぶつかってバラバラになり、そこから別の「個」が立ち上がる。「個」といっても一枚岩ではなくて、そこらへんにあるモノの寄せ集めだったりする。ある思想家が「勉強するとは、自身を壊し再構成することだ」と書いていたが、「食べる」「腑に落ちる」という行為の先に、個をバラバラにしてもう一度編み上げるような力が働くのかもしれない。
COMMENT
コメント
MOVIE
映画
- [企画・制作]
- ヨコク研究所|工藤沙希・田中康寛
MUESUM|多田智美・永江大・羽生千晶
吉勝制作所|吉田勝信・稲葉鮎子
- [脚本]
- 多田智美、吉田勝信
- [アートディレクション・タイトルデザイン]
- 吉田勝信
- [アニメーション]
- moogabooga
- [サウンドディレクション・音楽]
- 角銅真実
- [美術]
- 工藤沙希、田中康寛、多田智美、永江大、羽生千晶、吉田勝信、稲葉鮎子
- [顔料]
- 田中康寛、多田智美、永江大、羽生千晶、吉田勝信 (協力:Foraged Colors)
- [音源]
- 工藤沙希、田中康寛、多田智美、永江大、羽生千晶、吉田勝信、稲葉鮎子、角銅真実、玄宇民、志鎌康平
- [録音]
- 大城真、角銅真実
- [採集]
- 工藤沙希、田中康寛、多田智美、永江大、羽生千晶、吉田勝信、稲葉鮎子、髙野真、髙野文子、髙野景、角銅真実、大城真、綱川椎菜、春山えみり
- [記録撮影]
- 志鎌康平、吉田勝信
七連続鑑賞会 記録映像
FOR GRASP MATES
グラスプ・メイツ
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GRASPオリジナルGIFスタンプ
そのほか、オリジナルツールを制作中!
GRASPの活動に共感する“メイツ”のみなさんに向けて、さまざまなツールを制作中です。完成しだいお知らせしますので、まずはGRASP MATESにご参加のうえ、公開のご連絡をお待ちください。
キノコの採集中、山の斜面で足が攣ってしまったときのこと。斜面に必死でへばりつきながら、「あぁ、ものすごく小さな蟻みたいだな」と感じたことを思い出した。そのとき採った真っ赤なホウキタケは、茹でると、まるで内臓みたいな肌色に。“山に生えるキノコ”を食べていると思っていたけれど、なんだか山に飲み込まれているみたいな、不思議な気持ちになった。
小桧山聡子(山フーズ)
一度きりの人生、腑に落ちることはあっても、腑に落とされることは滅多にない! もうひとつの臓器はバトンのように知性や表現を次に次にと置いていく。摂取と排泄のあいまで生を実感する私たちは、しばしば1本の管にたとえられるが、実際はもっと複雑で奇妙。だからきっと楽しくて哀しくて美しい。見て触れて食べて出してつなげる。身体で考え頭を動かしながら、彼らは心のままに次の旅に出る。ところで、あいつのお尻、大丈夫かな……。
岡部太郎(たんぽぽの家)